シリアの水
藤原絵理子


お水を待ってるの
大きなトラックで
お水をくれるから
ずっと待ってるんだよ

水瓶はこわれちゃったし
鍋はぺちゃんこだから
こんなタライしかないの
ちゃんと持って帰れるか不安

弟がね
足にケガしたの
お母さんは看病だし
あたししかいないの

ロバがいればなあ
夜のカミナリに驚いて
逃げちゃったんだよ
手綱は太かったんだけどなあ

泣いてるヒトもいるし
喜んでるヒトもいるよ
姿をくらませたヒトも
銅像のマネするヒトもいる

あたしは
ちょっと悲しい
弟が元気だったら
チョコをもらいに行けたのに

だからずっと待ってるの
お水をもらって帰ったら
弟が元気になってるかもしれない
ふたりで町に行けるかもしれない


自由詩 シリアの水 Copyright 藤原絵理子 2014-04-14 22:44:40
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