遠雷
クナリ


本当が聞きたい あるものなら今ここで
僕の有限と君の有限の間で 不滅があると信じた
ずっと笑って指差して来たものを 君とだったから信じた

いつかは土に帰る
無かったことになる
五十年後に無意味化するなら
明日無意味化しても何が違う
いつまでも羊をやってられない
凍えて凍えて 人をあたため
今日もそれが楽しい振り

風は空を揺らす
万天がひるがえる
粉々になる鳥を見てようやく人はそれに気づく

穏やかな風に吹かれて 丘の上から
あの日二人で 狂乱の渦に踊る遠雷を見た
鳥が砕け
糸杉が割れ
雨がののしり
岩が溶ける
山をえぐり
海は逆巻き
阿鼻と叫喚の
千万の地獄変
なのに
無防備な僕らの
無防備な丘の
足元の花一輪 散らせない遠雷を 二人で見た
あの遠雷は 僕らだった

産まれた時に
一生分泣いてしまえばよかった

これ以上ないくらい
一番ぼろぼろになるまで
粉々に砕かれてから産まれればよかった

あの遠雷は 僕らだった。


自由詩 遠雷 Copyright クナリ 2014-04-14 20:01:00
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