古い蝉
草野春心



  古い蝉が、この部屋の
  窓に貼付いて乾いている
  色々なものが置かれていたが
  結局ひとつもとどまらなかった



  きょうの月は、頼み方しだいでは
  ベランダに降りてきてくれそうな月だが
  わたしはここを出ていく
  わたしは 今夜 ここを出ていく
  あなたの歯形のついた風を 右頬にそっとうけて




自由詩 古い蝉 Copyright 草野春心 2014-04-10 22:26:05
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