ブリキの感情
オダ カズヒコ




仲間を欲しがる人間の
不安と恐怖を責めてはいけないと
愚かな武装をした大人たちから
うっかりと聴いてしまったものだから

ぼくらはまた抜け目のない罠を
今日もまた一つ
職場のコピー用紙の裏側に
そっと書き置いてきたわけだ

誰かが背中を押してくれるなら
いつでも飛べる場所にいるのよと
うそぶいた女は
今日も職場に
家庭の粗大ゴミを持ち込んだ

ずる賢い人間たちの
嘘と虚栄を憎んではいけないと

愚かな武装をした大人から
うっかりと聴いてしまったものだから

抜け目のない優しさで
人の弱さに
手を差し伸べた

失ったものは
安っぽい感情とちっぽけな自尊心だけ

優しくしたせいで
ずるいと言われ
また憎まれた
その憎しみが深いほど
この痛みは確かだと感じられた
この先の

まだ見ぬずっと向こうの先に
人間がいる
途方もない
静かな痛みをかき抱く
人間だけを増やせ

人間だけを増やせ


自由詩 ブリキの感情 Copyright オダ カズヒコ 2014-04-10 00:52:44
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