冬と離音
木立 悟





水のなかの空
浪はひとつ吼え
蒼に倒れる柱
遠い遠い土けむり


鉄路の終着
痛い緑
池を割る花
色にそよいで


井戸が連なり 蛇になり
午後の陰をすぎてゆく
どこかで鈴が泣いている
ずっとずっと 泣いている


小さな小さなはばたきに似た
花の咲く音が打ち寄せる
影は風に細く飛び
径を径に切ってゆく


風が混ぜる光のなかを
芽のように漂う金と銀
無い音を染め
無い音を照らす


ちからの反対のかたちたち
溶け合い 撥ね合い
上下する溝
透るけだものの四肢の溝


冬を冬に描く手から
冬はひとつ逃れゆく
薄くこがね色をした
水辺の廃墟を駆けてゆく






























自由詩 冬と離音 Copyright 木立 悟 2014-04-07 08:36:49
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