不安−詩想との訣別
……とある蛙
帰宅する
幹線のJRの駅から田舎電車に乗り換え
一五分ほど奥まった田舎の駅
そこが自分の住む家の最寄り駅である。
妻と子が二人、義父母二人
六人が暮らす自分の家だ
自分の父母は随分昔に亡くなった
自分の兄弟も一人兄を残すばかり
ついこの間、他家へ嫁いだ姉が
早々と亡くなった。孫の顔も見ずに
帰る家はほとんど、
自分が成人する前には
馴染みの無い顔ばかりだ。
いや随分と経ってから
見知った顔ばかり
夕食はほとんど食べない
仕事場の近くで食べる
朝食は妻の給仕で一人で食べる。
いつも納豆御飯と味噌汁で
それ以外朝は口にしない
納豆は自分で捏ねる。
入念に捏ねる
帰宅してから風呂に入る
義父が最初で二番目が息子
自分は三番目
この順番を崩すと
女房にイヤミを言われる。
風呂から出ると
夜半までテレビを寝転がってみるか
小難しい本をやはり寝転がって読む
女房の話に相づちを撲ちながら
こんな生活がここ一〇年
身から出た錆とは言え
長い放蕩の後の終着駅だ
家中では誰も自分を尊敬していないし、
尊敬されたくもない。
女房とだけはまともに話をするのだが
最近彼女は異常な頭痛に悩まされている
そんな彼女の感情の起伏に
翻弄されている
グリオーマ
そして
今漠然とした不安と
寂寥感が広がる毎日
過ごしている。
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妻