押してもダメで引いてもダメなドアは
最初に押したからダメになった

閉じた気分を開いても
誰もこっち向かないのは
それと多分おんなじ

見てわからないものが
聞いてもわかんないのは

泣きながら決めた目的地が
今まだどこだかわかんないのと
たぶん、おんなじ

まだ大丈夫
そんなのは、嘘だ
昨日よりダメになりながら
怪物にでもなるつもりかよ
不足と苛みの中で
爪も肉もあれになってしまう
化け物になってしまう

眼球の中で起きた騒音
ガラス窓と美しい鉄球
静かなタバコをふかしながら
結局はこれと一緒だと思う

ぼくと世界の壁は
余所から持ってきて
吐き出した色の違う空気にすぎない

誰かが顔をしかめて通り過ぎた

ぼくは俯いて精一杯の力で煙を振り払った
壁はそんな事じゃ消えない
もしその誰かが振り返っていたら
煙越しに泣きながらうろたえる僕を見るだろう
自分で決めた行き場所がわからずに
腕を振り回す化け物に見えたろう

おれを化け物にしたのはおまえらだ


泣きわめいてもどうにもならなかったのは
嫌われたくなくて発した言葉は
好かれたくて差し出した手は
失いたくなくてしがみついた腕は
欲しくて払った金は
怖くてあげた叫びは
大好きになってしまった心は
ぜんぶが、もう

おれを化け物にしたのはおまえらだ


傷ついたふりをして逃げ続けた
ぼくの中のおまえらだ