ダイドーの自販機
小川 葉

 
 
毎朝、職場に行く途中、ダイドーの自販機で缶コーヒーを買っている。
しばらくすると、その缶コーヒーだけ売り切れになる。二日くらい後に補充されるのだが、またしばらくすると、売り切れになる。他の飲み物は、売り切れにならないのに。
この自販機で、この缶コーヒーを買っているのは、私だけではないだろうか。ふとそんなことを思った。
秋田は人が少ないから、同じ自販機で同じ缶コーヒーを、それも毎日、買っている人は、私以外にいないのかもしれない。
そんなことを思い、今朝、ふといつもの自販機を見ると、いつもの缶コーヒーが、二列に増設されていた。
「この缶コーヒーだけ、やだら売れるんだよな〜」
そんな声が聞こえた。ダイドーのお兄さんの、小さな独り言が聞こえたような気がして、おかしかった。
そして今朝もまたいつものように、同じ缶コーヒーを買う。すると今朝はめずらしく、数字が揃い、当たりが出た。
「ありがとう、ダイドーのお兄さん、売り切れになったら、またたのむよ」
私も小さく独り言を言い、まだ見たことのない、ダイドーのお兄さんに、小さくお辞儀した。
 
 


散文(批評随筆小説等) ダイドーの自販機 Copyright 小川 葉 2014-03-20 22:48:16
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