アーバン・ライフ
大覚アキラ

コンビニのある風景の中で
あたりまえのように生きている

交差点に立って周りを見渡すと
視界に5軒ものコンビニが存在する
そんな生ぬるい便利さと手軽さに
日々愛撫され続けている生活を
無条件に愛している

都市に生きるということは
そういう価値観に染まるということ

時々
逃げ出したくなる先は
ひなびた温泉地でも
ゆったりとしたリゾートでもなく
ただの圏外
電波の届かない場所

若く柔らかな緑の芝生が
足の裏をくすぐる感触を
いま裸足で踏みしめながら
姿の見えない鳥のさえずりに
恐る恐る耳を傾ける
そっと
肌を撫でていく風に
何かから切り離された自由と
何かから切り離された不安を
痛いぐらい感じながら

都市に生きるということは
孤独の意味を思い知らされるということ

コンビニのない風景で生きるということは
あたりまえのように不便で

仕事で出向いた先の
中途半端な地方都市の辺境で
ちょっとした買い物のために
コンビニを探しても見つからず
無性に苛立ってしまう

都市に生きるということは
そんな生ぬるさに飼いならされるということ

結局
帰る場所や
逃げる場所など
そんなもの
どこにもない

夕暮れの濁った温もりや
朝焼けの澄み切った冷たさ
そんな液体のような空気の中に
水中都市のようなビル群が林立する
その上をゆっくりと
小さな飛行機が横切っていく
この限りなく美しい風景
それをまるごと切り取って
自分の中に取り込んでしまいたい
スキャニングして
バックアップを取って
もしシステムがクラッシュしても
この美しい風景から再起動する
そういう準備をしておきたい

都市に生きるということは
そんな脆さにすがって生きるということ


自由詩 アーバン・ライフ Copyright 大覚アキラ 2014-03-20 15:51:18
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