きりん/リレー詩
こうだたけみ

直線と曲線が折り重なり春がきました。そこは麒麟なんじゃない、キリンなんじゃない、きりんなんじゃない、夜のそこはまだ冷えるから

冷えたそこから声がする
長い長いきりんの首のそこから
聞いたこともない鳴き声が届くの待っているの、ここで

リリックリリック、水曜日はいつも雨なので約束通りを左へゆけばサバンナ、ともだちの匂いする

匂いが記憶を呼び起こす
こんなにもいとしいのに草むしりなどできません
彼は歩きたい走りたいしゃがみたい
だけど檻の中には草もはえない

はえある名ではないけれど、あなたの知らない呼び名があったりする、あなたの知ってるあの木や花の脇の抜かれてしまうその草も悪くないって。きりんに食べてもらえる草になりたいとさえ思ったりするんだ、ビールでも、どう?

ソコハ麒麟ナンジャナイ?
おうむ返しに栓を抜けば溢れだす笑い声
爪楊枝から割り箸まで使いこなす春の宴、あるいはゲルギエフ
霞か雲か泡ばかりだってきっとおいしい

「雪ってさ、音を吸いとってしまうんだって。だから雪の日は静かなんだね。よかったら筆談しない?」って、ふたりで走り書きした冬のノートの余白に、春を足してみたいので、ソメイヨシノの下で待っています。

あの冬の一ページから首をきりんにして待っていてくれた人
ふたりの想像上のいきものは鳴くよ
リリックリリック スイヨウビノカドヲマガレ
かけだす足がはだしになって、ピンクの花びらとサバンナの草原に触れた


奇数連:阿卜理恵
偶数連:こうだたけみ


自由詩 きりん/リレー詩 Copyright こうだたけみ 2014-03-18 23:44:35
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