通過駅
イナエ


揺れる心地よさに
居眠りしていたわけではないが
通過してしまった駅があったという
ぼくを待っていた人に気付かず
遠ざかった町

乗車駅のアナウンスを
聞き落としたわけでもないが
急いで乗った急行列車
通過した駅に仕掛けられていた
いくつもの分かれ道

乗り合わせた人と時を過ごしたことを
悪かったと思いたくないが
遠く霞む豊かな山
岩に跳ねる谷の流れ
憧れだけを残して
過ぎ去ってしまった野の花
手を振る幼児にさえ気付かず
通り過ぎた窓の風景

降りることなど思いもしないで
見過ごした里の暮らし
採りに戻ることも
出来なかった数々の昆虫
追ってくる虹さえ振り切って
通過した数々の駅


          過去作「蕊」より


自由詩 通過駅 Copyright イナエ 2014-03-14 21:51:38
notebook Home