道端の風
クナリ

初めてのことを たくさん教えてくれたね
飽きっぽいのかなと思ったら 好きなものが多いだけだった
あんなに高いアンテナを 初めて見た

手に余るものを 大切にしようとして
ぽろぽろ指の隙間から 驚くようなものを落とす
ひとつひとつ拾って私は 
いちいち名前を付けるのが好きだった

一度立ち止まった 赤信号の交差点
また歩き出す時なんて たまらなく楽しそうにして
あの軽やかなコンパスが 好きだった
 
外国の歌なんて 知らなかった
海の向こうから届くのは 優しい歌声の震える風
ひとつひとつ捉えて私は
あなたとなら 風になるのが好きだった

趣味じゃないけど
振り返るのは
思ったよりも多くのものが
道端に今も
風の形をしたものが
風の色をしたものが
見えるはずのないものが
見えてはならないはずのものが

道端の風が見える人と
次に出会うのはいつだろう
道端の風をつかまえる人と
道端を歩くのはいつだろう

手に余るものを 大切にしようとして
ぽろぽろ指の隙間から
私もいつしかすり抜けた
こぼれ落ちるものを振り返る 
その時初めて さよならが聴こえた

今はまだ
風になれると思うよ。


自由詩 道端の風 Copyright クナリ 2014-03-14 19:14:18
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