悲しき桃太郎
吉岡ペペロ

桃太郎はさびしい男だ

きびだんごがなければ

ともに戦う家来はいなかったのだ


となりのベッドの見舞い客がそとの桜の様子を話している

彼は半身を起こし窓際に意識をやる

さっき一馬が開けてくれた窓からの微風が頬を撫でる

窓の下からひとの声があがっている

一馬や咲や真須美の声がまじっているような気がする

彼はその方にしっかりと顔を向けた


桃太郎はさびしい男だ

きびだんごがなければ

ともに戦う家来はいなかったのだ














しかし彼が桜を見ることはなかった







自由詩 悲しき桃太郎 Copyright 吉岡ペペロ 2014-03-08 19:00:59
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