ある日、過疎ってる街にすげー雪が降った
カマキリ

もう忘れてしまったかもしれないけれど
ある日、過疎ってる街にすげー雪が降った
朝の5時からけたたましく鳴る携帯にうんざりした
こんな時間だもの、きっと何か悪い報せなんだ

電話の内容は本当にちんぷんかんぷん
寝起きだからなのか
それともまだ夢なのか

それにしても怒号とは悲痛にも似ているな
少し頭が良くなったような気がした私は誘導されるままに
部屋のカーテンを開けて、外を見てさらに夢の中ではないかと
早とちりを加速させることになった

雪国ほどじゃあないが、少しは降ってこどもたちがはしゃぐ街だ
そんな休日はあちこちでベランダに飾れるほどの大きさで雪だるまを見る
だけどそこにあったのは軽自動車が覆い尽くされて
悪質な冗談のような雪だるまが、駐車場に並び立っていた

とにかく、何もしない何もできない日が出来上がったのである

仕方なしと呟いてごろごろするに限るのだが、夕方には家庭内物資が切れた
長靴も用意していないのでスニーカーをダメにする気概で外に出る
当然、車は白く固くされているのでそのプランはバツ
腰より上の雪の包囲網をかき分け色々なものを湿らせながらコンビニへ
まあ、そこにも物資なんてなかったのだけれども

車道だか歩道だか分からなくなった場所で
何台もの車がスタックし、駄々っ子のような空回転を余儀なくされている
目的地までの往復で5台ものそれに協力せざるを得なかった
居酒屋のおっちゃんも自分ちの毛布を犠牲にして
文字通り立ち往生の車を助けていた

近くの定食屋は無料炊き出しを始め、
カーポートは次々と潰れ始め、
救急車が何台も何台も通り過ぎていったところでやっと
私は、アレ?ちょっとヤバイんじゃない?と思い始めたのだ
受験生がシャレになってねえよ、と転んだ友人に手を差し伸べたのが
ちょっとだけ面白かったのは内緒なのだが


だいぶ端折って今日
ある日、過疎ってる街にすげー雪が降ったのを忘れるくらい白い部分がなくなっていた
助け助けられ、知らない人たちと笑いあったのは幻だったのかなと
信号待ちの車の中で考えていた

帰ると、遅くなったけどあの時はありがとう、助かったんだから、と
おばあちゃんが煮物を作って持ってきてくれた

嬉しいのと照れくさいのがもやもやして
ヤマなしオチなしでこれを締め括るのである





自由詩 ある日、過疎ってる街にすげー雪が降った Copyright カマキリ 2014-03-07 20:24:56
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