中二階の黒猫
……とある蛙

中二階の六畳間で
タンスの上の黒猫が奇妙なことをする。
長い舌を出しながら
タンスの上を転げ回るのだ。
そして突然畳の上に下りてきて
俺の目の前で長い舌を出し入れする
じっと俺の目を見つめて
俺は猫の言いたいことが分からず
怒りで黒目になっている
黒猫の瞳の奧をじっと見据えた。
そこには此処一〇年の
俺と女房の生活がパラパラ写真のように
また
後先バラバラになって映っている。
全く的外れなことに
俺は黒猫に向かって
鰹節を喰うか
等と話しかけている。
猫は唸っている
黒猫は知っているのだ
俺と女房の関係が突然断ち切られることを
黒猫は知っているのだ
俺が後悔ばかりしてメソメソしていることを

女房が部屋に入ってくる
黒猫は何も無かったかのように女房にすり寄る
座った女房の膝の上に
前脚を揃えて置き
そして女房の顔を覗き込むのだ
優しげな声を出して


自由詩 中二階の黒猫 Copyright ……とある蛙 2014-03-07 13:41:22
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