再び生きる
そらの珊瑚

春色のセーターをほどく
うねに添って並ぶ
小さな毛糸の環が
現れては消え
現れては消え
優しく解体されながら
終点に向かう

逆回転を奏でる音楽のように
くぐっては消え
くぐっては消え
懐かしい絆ぎ目が
セーターの中に
隠されていた
冬と春を結んだ未来に
夏と秋がつながるように
声変わりした声帯が
ファルセットでうたうように

前身頃がなくなった
中継地点で
母は手を止め
起点を
振り返る

透けたカーテンが揺れる
よぎっていくのは
思い出のなかに
棲んでいる
幼子の無邪気の影

編み目から     (行間から)
解き放たれた    (読み解かれた)
糸が         (詩が)
ひとかたまりとなり (ばらばらとなり)
柔らかく      
戯れながら
再生する季節を
待っている

待っているよ    (待っているよ)




自由詩 再び生きる Copyright そらの珊瑚 2014-03-07 10:15:44
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