卒業
佐野権太

制服を仕立てにいくと言って
行ってしまった

トイレや脱衣所の扉が
足音に反応して閉められる
ほろにがい痛みをともなう
(バタン、カチャ
ちゃんと閉めなさい、なんて
言ってたのは
いつまでだったろう

ときおり
おとうさん、なんていうから
辺りを見まわしてしまう

通り過ぎてゆく風
つかのまの
複雑に交ざり合った気持ちが
ちいさく舞いあがって
なあ、パパは
いったいどこへ行けばいい

ぽっかり空いたリビングの
出窓に
晴れやかに笑っている
まだ幼い頃のおまえに
添えてみる
卒業、おめでとう

こんな空色の季節を
きっと
さくらって言うんだろう







自由詩 卒業 Copyright 佐野権太 2014-03-04 17:59:49
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