春という字【詩人サークル群青三月の課題「春」への提出作品】
そらの珊瑚
手近な男とくっついちゃって
あたしもヤキがまわったかなあと
それが照れ隠しなのは
彼女の顔を見たらわかる
手近な言葉
ありふれた言葉
黒板消しで拭くたびに
私の屋根に白いチョークの粉 降り積む
そもそも誰も使ったことのない
未知の言葉なんか
ないのであれば
新しい言葉を探すことなど
徒労に思えてくる
知っているはずの言葉が
突然
知らない顔をして
UFOから降り立つように
現れたなら
はっとして
それから恋して
手近な言葉とくっついちゃって
と
私も笑ってみせたい
春という字のなかに
とても穏やかな一日がある
どこにでもあるような
ここにしかないような
ささやかな幸せのような
そんな一日が
とても身近に
花屋の店先で揺れていた
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「詩人サークル 群青」課題作品