狂気の証拠を捜し続けて
銀馬車でこい

右手にホクロを
刻まれて生まれて
ホクロが消えかかった
アリバイのように
一切の追憶が
証拠にならなくても

誰も知りえない罪の 
秘密は何よりも甘く薫りながら
孤独に生きる人間の
一人の成分のうち5分の1は
つまり 五体満足のうち一体が
「神」という名前の
独特の物質でできている

それは徹夜明けの科学実験
によってきっと解明されるだろう
殺意というエネルギーエキスは
必ず発見されるだろう

「紙」と言う別の名前の
物質でできたある
秘匿された過去を
届けられるはずの新聞紙には
白んだ雪の降りしきる

夜明けにも3:00には起床して
新聞の配達員が何かを思い出す
「本日の犯罪」は理由もなく
登場する有名人が
いつもあの人ではない
究極の思想の
自由を掲げたゴッシプの
犯罪記事はなぜか
いつも疑うことが
できないんだよ

あくる日もまた 
あの人ではない犯罪人格が
ゴシック文字の
記事になって
カラー広告と
一緒に印刷されている

すでに熔けはじめている
完全犯罪のように
熟眠した待機中の
機械式の思考回路のように 
亡失したテーゼは銃弾のように
哲学書のすでに
一枚破られた1ページは
果たして例の殺意の
証拠にはなるだろうか

運搬の話はそれほど
得意ではないけれど
そろそろと狂いながら
陽が昇るころに
エサを運ぶペリカンが
翼を広げても
海岸で日だまりを探す
黒猫が走っていても
佐川急便のトラックの
運転手が深夜の仕事中でも
ある犯罪記事を届けてもらうことは
可能だろうかと想う
そうすれば証拠にはなるかもしれない


自由詩 狂気の証拠を捜し続けて Copyright 銀馬車でこい 2005-01-17 21:57:44
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