肉食獣 / 不思議
クナリ

<肉食獣>

私があなたに耳にかみつくと
あなたは私の腕にかみつく

私があなたの眼にかみつくと
あなたは私の手のひらにかみつく

私が食い込むたびに
あなたは遠ざかっていく

私があなたの首にかみつくと
あなたは私の指先にかみつく

私があなたの心臓にかみつくと
あなたは私の爪の先にほんの少しかみつく

私があなたの脳にかみついたら
あなたはきっともう私に触れない

飽きられも 見放されも
逃げられも 幻滅もされない
そのためにはどうしたらいい

牙しかないのに
牙しかないのに
唇もないのに
牙しかないのに

牙しかないのに
牙しかないのに
牙しかないのに
牙しかないのに

今はただ熱さに触れたくて
触れてはいけないものをかみ裂くだけの

あなたの大事なものほど
壊してはいけないものほど
奪い上げては
かみ砕くだけの

そんな風に
何かを損なうだけの
かみ裂き方ばかり覚えて
あなたの食べ方も知らない
出来損ないの


獣。





<不思議>
あれ
また会いましたね
不思議ですね

会おうとしたわけではないんですけどね
会いたいと思っていただけなんですけどね

不思議ですね
でも、いいことですね。




自由詩 肉食獣 / 不思議 Copyright クナリ 2014-02-28 19:50:20
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