沸点の雨
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いなびかりが消える前に
濡れた制服の女の子に
ワイパーが生む摩擦に
思い出してしまって大変
黙って指なんてなぞる

雨に拒絶された車の中の
あなたとわたしと蚊
輪郭があやふやになった電信柱が溶けて
じゅうじゅうじゅうと流れて行った

ぱちん
体にぴたりとくっついた足と、体からとぎれた足と少しの血液
手のひらを覗き込んだあと二人思わず目を合わす
わたしたちは見えるもの見えたとおりでそれが真実と思い込む
喉の奥がちりちり燃えて可哀相だからキスしない

あなたがどんなに手馴れて近づいても
わたしがどんなにこんなにあんなでも
絶対、絶対
境界線がなくならない


ばたん
窓の外に直線がなくなったことに気づく前に
外に飛び出たわたしたちの輪郭線が溶けて
自由自由自由と流れていくのを
車の中から眺めてそれを
さあ真実と思い込もう





自由詩 沸点の雨 Copyright ________ 2005-01-16 22:52:02
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