猫のいる部屋
大覚アキラ


わた し は ねこ だ
な まえは ま だ ない 


殺伐とした空気が支配する部屋で、
きみは子猫に名前を付けようとしている。
子猫が産まれてからもう三日が経った。


わた し の ほかに も きょうだいが
い た は ずだが き がつくと
わ たしひと り に なってい た


四匹産まれたが、産み落とされた時すでに一匹は死んでいて、
その日の夜に二匹目が死に、翌日の昼に三匹目が死んだ。


にんげ ん が のぞ きこ んでいる
わたし は ねむ ってい るが
そ の けはい をかんじるこ とは で きる


残った最後の一匹が
タオルを敷いたダンボールの隅で、
丸くなって眠るのを眺めながら
きみはずっと、その子猫の名前を考え続けている。


に んげ ん は すこ し ほほえ んで い る
その りゆ うは わか ら ない


母猫は二日目の朝に出ていったままだ。
たぶん、もう帰ってこない。そんな確信がある。


ここ は あ たた かい
そして さつばつ と し ている


どのみち、明日にはおれたちも
この部屋を出ていかなくてはならない。
子猫の名前よりも、
明日の夜をどこでどうすごすかを決めるのが先だ。


わ たし は ねむ りにおち ていく
この ま ま めざめな い か もしれ ない


なのに、そんなことはお構いなしに
この殺伐とした空気が支配する部屋で、
きみはずっと、子猫の名前を考え続けている。


わた し は ねこ だ
な まえは ま だ ない


自由詩 猫のいる部屋 Copyright 大覚アキラ 2014-02-13 10:35:55
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