乞巧奠
藤原絵理子


七夕飾りを作った
網飾りと提灯をつけた
短冊を書いてヴェランダに飾った

あいにくのくもりぞら
空を見る気にもなれず
意味のないTVドラマを観た

ヴェランダで妙な物音がする
カーテンを開けると
洗濯機の上にパンダがいる

パンダは驚いて
たこの足にぶらさがった
あたしの黒いブラを掴んだ

何してんの?
アイマスクに丁度いいなあと思って…
不眠なの?

かわいいパンダは
いやらしい目をして
‘待遇’についての不満を述べた

かわいそうになってブラをあげた
お礼の言葉もなく
パンダは夜の闇に消えた

その夜あたしはラジコンヘリの夢をみた
そして気づいた
パンダが欲しかったのは
七夕飾りだったんだ


自由詩 乞巧奠 Copyright 藤原絵理子 2014-01-28 22:22:42
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