ふゆげしき
藤原絵理子


あたしの両目には
瞬きできるまぶたがない
いつも涙を流している

見開いているのに
像はゆらゆら揺れる
世界はいつも揺れている

あたしの左手には
指輪をはめる指がない
いつも独りで綾取りしている

茶色い幻影肢が
虚空でじゃまをする
うまくできない鼓

あたしの悲しみは
宛名の読めない手紙
古いインクは雨に滲んだ

孤独の煉瓦を積んだ
あたしの城壁の中では
冬枯れて広くなった林に
カラスが鳴いているばかり


自由詩 ふゆげしき Copyright 藤原絵理子 2014-01-27 21:40:27
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