ノート(冬と手)
木立 悟




みんな白や金を胸に受けとめ
白や金の朝に溶けそうだった
目を閉じた笑み
草のなかの笑み
肩から上を
地の陽に向けて



誰かが果実を抱いているとき
どちらが果実かわからぬ光の
瑞々しさと不安の手を結ぶ
何もさえぎるもののない光を
見つめつづける瞳のあるとき
見つめつづける瞳になるとき



山頂の星々を
はじまりと終わりの花々を
切りすぎた前髪に絡めては
冬の原に振りまいてゆく
くりかえし くりかえし
さかいめの無い色にひるがえる
淡く不確かなふちどりのまま



雨の日の植物園には
姿を持たない感情の生きものがいて
壁を伝い流れる緑や
細い線の連なりに紛れて
つぼみのなかに入り込み
白や金の花を咲かせる



空には風の片道があり
冠よ 冠よと花は呼ぶ
光の傷から現われる声
音をなぞる蔦と葉の
文字と文字ではないものの間に
窓は空を書きうつす



袖をいろんなかたちに切り抜いて
髪飾りを布くずでいっぱいにして
静かな雪に染まろうとする日に
子らは胸元に降る白や金が
たくさんの色に招かれて
ゆっくりと目をひらくのを見た
見えなくなるようなかがやきのなか
手を結ぶ小さなふちどりを見た









自由詩 ノート(冬と手) Copyright 木立 悟 2005-01-14 20:19:28
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