夜と雨
木立 悟





花をすぎる花
こぼれる花
閉じた片目から
飛び去る花


花は重なり 水になり
灰の飛跡をとどめている
空は震え
空は枯れ野


多くの音が暗がりにうなずき
眠りを棄て去り 立ち尽くしている
おぼろな光
外をゆく影


手のひらは小さく
降る花は大きく
こぼれ こぼれ
火のようにひとり


幾重にも径に縛られた
丘の上の廃屋から
光ではない明るさが
湧き出ては湧き出ては滲んでいる


常に何かが流れる壁の
内側の一瞬の静けさに
落ちる水 増す星
花めぐる花


畏れ 行方 わずかなむらさき
灰 水音 すぐ消える声
背の群れの外を
知っている声


花は落ち 水を濁し
片目はひらき ふたたび閉じ
何も映さぬ水たまりの径
野のはじまりと終わりをふちどってゆく





















自由詩 夜と雨 Copyright 木立 悟 2014-01-09 09:47:47
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