幸せはいくらで買える?
瓜田タカヤ

仕事の休憩時間、ひたすらスロットを叩いていた。
コイン噴きまくりだ。

でもこんな日々はダメだ。一体何千枚のコインを
スロット台から吐き出させたら、幸せになれるというのか。

もしそれで百万円でも稼いだら、幸せになれるのか。

夕方に仕事場に戻らないとダメだったんだけど
コインが止まらなくて、遅刻した。

夜に子供が又しても風邪をひいていた。
今回は熱はそんなに無いのだが、くしゃみと咳、鼻水がすごい。
いつもうるさい子供が、目の焦点が曖昧でぼーっとしている。
見ていて可哀想だ。

しかし今日は一度も外に出ていなくて
ストレスたまっていそうだったので、
午後10時頃スーパーマーケットへみんなで買い物に行った。

カゴを手押し車にのせて、色々物色していた。

子供がオモチャが欲しい。というので
カゴと手押し車をそのままにして、スーパー内の
文房具売場横とかによく陳列されている、
ちゃちなオモチャが置いてる場所までみんなで行った。

子供は散々悩みに悩んだ末に、結局とても安い作りの
お医者さんセット(プラスチックの聴診器と注射器と体温計)
280円を買った。

子供はそれをずっと自分で持っていた。

みんなでカートが置いてある場所まで戻ったら、
カートと買い物かごが無い。

しばらく家族で探したが、どこを探しても見つからなく、
カミさんが店員に聞きに行った。
すると奥から店員が出てきて
「片づけてしまいました。そのまま置きっぱなしで
 帰ってしまう人とかいるんですよ・・。」
と申し訳なさそうに話した。

そして、俺達家族は、もう一度買い物をすることになった。
完全なる時間よ戻れだ!
さっき買った物を、もう一度探して買い物かごへ入れなければ
ならなかった。
突然の現実内での記憶力ゲームを
神から突きつけられた気分だった。

家に帰ると、子供は先ほど購入した、お医者さんセットで早速遊んでいた。

小さなお気に入りの人形を持ち出して、聴診器をあて、
熱を計り、注射をした。

聴診器のビニールチューブの部分が柔らかく、先端に装着され
ている丸い胸に当てる器具が、何回か外れるのだけれども、
その度にくっつけ、人形の心音を聞き取ろうとしていた。

「パパがみいちゃん(人形の名前)のパパね。」
とハナをすすりながらしゃべり
俺はみいちゃんのパパになり、子供先生がいる病院へ
何度も治療を受けに行った。

きっと子供にはみいちゃんの心音が聞こえていて、
俺には咳込みながらも、
はしゃいで笑う子供の声が聞こえていた。

電気ストーブの熱が
冬の冷気を少しずつでも撹拌する。

280円で

幸せは買える。


散文(批評随筆小説等) 幸せはいくらで買える? Copyright 瓜田タカヤ 2005-01-14 02:36:42
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