夏虫
ベンジャミン

ゆうべは、ほんとうに困ってしまいました

わたしがとぼとぼ流れ出して
それは我慢がききませんから
両の手に溜めてすすりました

 はあ、と吐く白い息にも
 わたしがいるようでしたが
 それは、幻だと思いました

どこからともなく
夏虫が
枯れ葉色の羽音をたてて
乾いたわたしにすりよってきました

 おまえ、夏虫というのは
 わたしの勝手な言い名で
 どの季節にもいるのだろ

わたしから何を吸い取ろうというのか

おまえにやるものがあるなら
くれてやろう
おまえはそうやって生きる

 その小さいからだに
 みあったみかえりを
 胃に溜め込むのだろ

おまえやはり、夏へゆけ
おまえの命を奪うまい
枯れ葉色の羽音をつれてゆけ

 わたしもこの痛みを
 吸い尽くしたら
 飛んでゆこう
 
おまえ、夏虫というのは
わたしがつけた名であることを忘れるな




自由詩 夏虫 Copyright ベンジャミン 2005-01-13 20:12:03
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