肩ごしに
とおの

みどりの精悍な城あとをみる
稜線はふるえて、夜半
南へむかうと述べた喉の
ほとけに花燭を抱きあわせ
うきあがった契りの舟をそらへ
放流する手つきで 投げた

その眼には
映っているだろう、
捕縛された四つ脚で依って立つ埴土
散りばめられた玻璃質の
珪素の夜を踏みならす軍靴が
じきに みなし児の頭蓋へと降り
あなたを産んだ星々のうらの地層にも降る
どうか
この祈りに還ってはならない
けさには闊歩し 喰い尽くす慟哭が
胸骨を圧砕し引きちぎる
素粒子らの換喩をわたしたちは
聴きとどけなければならない
やがてひとつの夢は膿み
廻らされた連環へとただれ、朽ちゆく、
その地平を
逃げみちとして 鏡を喚び
炎え落ちる水辺をたよりに、
あちらの陵まで

見わたした 手を
ふるえる口元に寄す
それから夜明け、あなたの
肩ごしに問わず語りの星座をおくる
航跡がゆるむ
帆をあおいでいる


自由詩 肩ごしに Copyright とおの 2013-12-18 22:14:12
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