大切にプールされた心を貯めなさい、消費しなさいと経済
アナリストが言いますが、
嫌です、お断りです、と言うと周りは白目で私を見つめる。
夕方
アビーロードのように横断歩道を堂々と渡りたいわ、と言
った女の手の爪は綺麗に切られていた。
いつからか、その爪と、指と、手と女が、好きだ。
その手を握ってもいいだろうか、と私は言う。
頷いた女の頬にキスをしながらその繊細な、ガラス細工の
ような手に触れた。
女は良い形をした口を私の耳に近づけ、死んだ人が蘇る不
思議な夢で流れた歌を口ずさむ。それは「Beatles」とい
う最も有名なバンドの曲らしい。
http://www.youtube.com/watch?v=S09F5MejfBE
いずれ、最後の日になれば死人はみんな蘇るから、そのと
きはこの歌を歌いながら私を探して。そう女は呟き、罪を
全部背負ったような瞳で私を見つめた。
微笑みながら目に涙をためる女にもう一度キスをする。
女を家に返し、寝床に入るころには日の出の時間になって
いた。
私は祖母が口ずさんだ、戦地へと行く祖父を送る軍歌を思
い出していた。煙草ように、徐々に消えていく心は私の意
思ではないと、寒冬に身を縮めながら。
《劣の足掻きより:
http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》