真昼
木立 悟
やわらかな文字が降りてくる
葉の裏側の粗い緑に
次々と染まり 降りてくる
朝の方位へはばたく鳥の
青い青い羽の炉心へ
影はたなびくように落ちてゆく
午後の淵に集まる鴉
終わる季節を聴いている
聴こうとすれば聴こえない音
地を往くものに忘れられた音
雲より静かに呼びかける手に
めぐりを終えてはたどりつく
石の道が冷えてゆく
とり残された真昼の音が
遺跡の夜を撫でている
壁に描かれた様々な死が
音に照らされ色褪せてゆく
遠く灯の輪が行き着く先に
水をわたる震えの向こうに
燃え尽きた羽はよみがえる
小さくうなずく音の手のひら
青い水紋を抄いとり
飛び去るものを映しては
ひとりの光に微笑んでいる