何もない日の朝
狸亭


05:50 目覚ましが鳴る
ピッピッピッ
頭を押すと目覚ましが止まる
ピッ ピッ ピッ ピイ ピイ ピイ
小鳥の囀りにかわる
ぼんやりした靄をつきぬけて
06:00 妻が起きる
06:10 に夫が起きる(妻が階下に降りたのを確認して)
排便洗面(座薬を挿入したり)
仏壇のコップの水だけ替えている
夫がすっかり身支度をすます頃
06:30 ひときわけたたましくまた目覚ましが鳴る
予備校一年生の長女が起きる(筈だ)起きたろうか
ラジオ体操の元気な声が高まる
夫が階段を降りると
対面キッチンのカウンターに
らっきょうの瓶詰め
炊立ての御飯 湯気の立つ味噌汁
さんまのひらき(上半身のみ)と大根おろし
こんぶ(か)おから(ゆうべの残りがあったときだけ)の煮付け少々
長女があわただしくカウンターに並ぶ
夫はうまそうに食べている(ほんとうに朝飯が一番旨いのだと言っている)
06:50 長女が出て行く
新聞とコーヒー
と(そうそう)爪楊枝
07:00 の時報が鳴ると夫が出て行く
二階で二男坊の怪鳥のようなガラガラガアッという嗽の音
長男と末っ子の三男坊は(大型の)二段ベッドで寝ている
降りてきた高一の二男坊に言いつけて
あとの二人を起こさせないと
(大学二年生と中三はいつも呑気で二匹のヘビのように起きない)
一緒に御飯食べてよ
妻は母親になりますます忙しく
早く皆を追い出さないと
食事の後片付けや
掃除やら
大量の洗濯物と
何もない一日へと続く朝が終わらない。






自由詩 何もない日の朝 Copyright 狸亭 2003-11-02 06:27:53
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