イルミネーションの影
番田
誰もいなかった
街は身を切るような冷たい風が吹く
誰もが財布の中に明日を抱えて
耐えていた
凍えるような冬の時の中
どこに行くのだろう
立ち止まるとき
わからないけれど
まだ若い恋人同士は手を繋ぎ合ったまま
六本木の賑やかな通りの中
キスをするにも触れあう指先は冷たすぎた
目を閉じることだけが確かなのかも知れない
地下深くに埋まる死体
戦国の歴史を抱え
薄笑いをそれぞれの顔が浮かべているのかもしれない
それともありはしないのか
どこまでも果てしなく続く冬の朝を歩く
きっと公園で歌っているであろう少女の横顔
そんなものを思い描いている路地裏の道
*
明日になれば
冷たい仕事場がまた僕を待っている
冷たい笑顔が
僕の弱さをそこで凝視する
僕は手にしたデッキブラシで硬いタイルをこすりながら
抱いてたはずの夢を消すように
生きていくのかもしれない
自由詩
イルミネーションの影
Copyright
番田
2013-12-08 13:13:59
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