イルミネーションの影
番田 


誰もいなかった
街は身を切るような冷たい風が吹く
誰もが財布の中に明日を抱えて
耐えていた
凍えるような冬の時の中


どこに行くのだろう
立ち止まるとき
わからないけれど
まだ若い恋人同士は手を繋ぎ合ったまま
六本木の賑やかな通りの中
キスをするにも触れあう指先は冷たすぎた


目を閉じることだけが確かなのかも知れない
地下深くに埋まる死体
戦国の歴史を抱え
薄笑いをそれぞれの顔が浮かべているのかもしれない


それともありはしないのか
どこまでも果てしなく続く冬の朝を歩く
きっと公園で歌っているであろう少女の横顔
そんなものを思い描いている路地裏の道



明日になれば
冷たい仕事場がまた僕を待っている
冷たい笑顔が
僕の弱さをそこで凝視する
僕は手にしたデッキブラシで硬いタイルをこすりながら
抱いてたはずの夢を消すように
生きていくのかもしれない



自由詩 イルミネーションの影 Copyright 番田  2013-12-08 13:13:59
notebook Home 戻る  過去 未来