よはく
AB(なかほど)


昼下がりのよはく

 貴方の町でも蜩の声は聞こえるのですか
 窓の外に目を向け
 あれはまだ桜も咲いてない午後だったのに
 耳鳴りが
 今でも止まない


  

春のよはく

 昨日の唇が
 いや 
 と震え
 あとは霧雨
 それは僕ではなく君のものか
 あるいは
 まったく知らないひとのものでもあったのかもしれない
 のにまとわりついて
 霧雨
 濡れないままで
 今日も
 唇 が
 いや
 と




唇のよはく

 ありふれた言葉でゼリイをつつくと湿ったにおいの味がする。君はもう、僕は今でも、なんてありふれた記憶でゼリイをつつくと、湿ったにおいの味がする。特に大粒ブドウのゼリイは湿ったにおいの味がするから、一心不乱に平らげる。




台所のよはく

 北窓から子らの声が聞こえ
 風のように聞こえ
 いつのまにか
 まあ、なんと
 花咲き乱れる国の遠くなったこと

 歳を重ねれば火の神を祀り

  やがて
    あなたも




白のよはく


 僕はイントロンの海で眠る

 僕はイントロンの海で眠る

 僕の白に意味はなく

 僕はイントロンの海で眠る

 イントロンの海で眠る




   


自由詩 よはく Copyright AB(なかほど) 2013-12-06 00:40:16
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