ただ、それだけで。
たまごボーロ

無表情なコンクリートは
四角く空を切り取っている。
八階建ての建物の中庭から
見上げた景色は
井戸の底から見上げたようだ。
空は透明感が増し
心の無駄な黒い部分を吸い取ってくれる
そんな気がして。

今年の冬は昼間が暖かくて
外に出る回数を増やしてくれている。

しかし

無機的な人混みの中で
誰一人とて空を見上げる人はいない。
そんな機械のような顔をしてないで
空を見上げてごらんよ。
多少は清々しいとは思わないか。

場違いな笑みで周りの目を引いても
大したことはないさ。

今日は晴れている。
よき日だ。

ただ、それだけで
人に戻れる。

悪い黒いものを吸い取ってくれる
そんな気がして。

今日は晴れている。

ただ、それだけで。




自由詩 ただ、それだけで。 Copyright たまごボーロ 2013-12-04 11:25:53
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