ひとつ 離れて
木立 悟






長い夢から覚めた後の
そこから動いてはいけない心
何もしてはいけないと
ただただそこにたたずむ心


いつか何もかもを
消し去りそうなものへの
あこがれと恐怖から
離れられず 逃れられずに


午後の幽霊
なかばで消える
見て見ぬふりの
庭を巡る


扉の影へ降る飛沫
静かに踊り 増えてゆく
左目の下に
増えてゆく


夜と水と径
微動する径
湯の痛みと膝
霧なぞる指


光が聞こえ
立ち止まり
頬の水に触れ
火は歩きゆく


退いたはずが近づいて
いつのまにか追い越している
平易の波の頂を結び
冬に冬を描く指


群れの光に照らされながら
群れの光に成れぬもの
海から河口から川から離れ
ひとつの水たまりに指をひたす






















自由詩 ひとつ 離れて Copyright 木立 悟 2013-12-03 23:50:47
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