拳(こぶし)
草野大悟2

きこえてくるのは拳(こぶし)
吹き抜けるかぜだ
三人で掴んだ世界の頂点だ

親父は独善的に漫画の世界のテクニックを教えた
それしか知らない親父の悲しさを
俺たち兄弟は世界に出て初めて気付くようになった

きこえてくるのは風
吹き抜ける拳
世界の頂点 親父の夢 を叶えた俺たち三兄妹は
どんなことがあっても
誇らしくこの日を思うだろう

俺たちが年老いて
なにも頼るものもなく
ひとり
老人ホームで暮らすことになっても
くりかえし
くりかえし
この日の矜持を語り続けるだろう
たとえ
だれも
聴く人がいなくても


自由詩 拳(こぶし) Copyright 草野大悟2 2013-12-03 22:19:44
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