初雪
そらの珊瑚
その肩に
いつも少年は
かなへびをのせていたので
私はそれが作り物だと思っていた
見慣れてしまうと
日常は背景になるので
誰もそれを指差したりはしなかった
私を見ても
誰も指差したりしないように
友達 死んだ
と
少年はつぶやいた
息が白く凍って
きらきらと空へ昇ってゆく朝
指差すほうから
雪が降りてくる
あれ なに?
少年は疑問符を覚えたが
相変わらず
言葉と言葉のすきまを
埋めようとはしない
それは砂場に落ちた砂粒のひとつのように
連結されないまま背景になった
肩もまた繋ぎ目であるし
形状は緩やかな斜面なので
何かをのせるにしては安定感は悪いけれど
なぜか雪はそこにのりたがる
きっと居場所というものは
そういうものなんだろう
さびれた公園は
駅への抜け道になっていて
冬支度の人々が
早足で歩いていく
どの肩も丸みを帯びて
かなへびほどの軽さ分
右へ左へ傾いている
近道でうかせた
ほんのわすかな時間で
つりあいをとるのだろう
本物と作り物の間で