ゆびきりげんまん
中山 マキ








宇宙の真ん中で砕けた石が
杉並区を直撃すれば
わたしは死ぬ
だからあなたを救えない

運ばれたキール・ロワイヤルの中に
毒が混ぜてあっても
わたしは見分けがつかない
だからあなたは飲み干してしまう

わたしがあなたに
してあげられることなど
たかがしれている

1人の人間が1人の人間を守るのは
相当難しいことだって
夜のニュースを
真面目に3時間見ているだけで分かる

あなたはわたしをまるで守るかのように
人ごみで手を繋いで
満員電車で抱き寄せて
強い風の前に立ち塞がるけれど

あなたが人々がひれ伏すほどの
ヒーローになって
死んでから銅像が立っても
私は何も嬉しくない

わたしがあなたに
してあげられることが
たかがしれてるように
あなたがわたしに
してくれることなど
実はたかがしれている

1人の人間が1人の人間を支えることが
どれだけ難しいことかを
知っている人の方が
本当は優しくて正直なんだよ

わたしのために
あなたのためになんていう必死さは
いつかそれぞれの足枷になるかもしれない

可能性が0じゃないことに
自ら選択することは
有意義ではないとわたしは思うから

ゆびきりげんまんうそついても
はりせんぼんは
あなた自身のためにのんで

ゆびきりげんまんうそついたら
はりせんぼんは
わたし自身のためにのむよ

わたしは強くないけれど
あなたを守りきる自信はないけれど
何かのきっかけで
たとえあなたのために死んだとて

それはあなたのためじゃない
わたしのためなんだって
今際の際まで思いたい

それであなたがわたしより
1日以上生き延びたなら
その方がずっとしあわせ

仏壇でありがとうって
手を合わせてくれれば
その方がずっとしあわせ








自由詩 ゆびきりげんまん Copyright 中山 マキ 2013-11-27 16:45:43
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