[逆さ水]
東雲 李葉

ぬるま湯を飲む時はお湯に水を混ぜる子でした。
横縞のモノクロを縦縞にして着たがる子でした。
今よりもっと冷夏の目で見つめていた昆虫の祈りは、
今ではもっと寒冷の手で乾いた死骸を潰します。

どこかで間違ったわけではなく最初からどこもかしこも間違いだらけ。
右の正解には敵わない左の絵の緑のりんご。
私はりんご。木の葉に紛れて生っている。
たわわな身を揺らしても誰に選ばれることもなく。常識的な正義が人差し指。

病院のお薬は震える脚を止めましたが足場を固めてまではくれませんでした。
私はもう大人ですから湿地も砂漠も一人で歩んでゆくべきなのですが。
振り返ると小さな私がいつまでも温くしすぎた白湯を飲んでいるのです。
いつまでもいつまでも吐いてもまだ飲み続けているのです。


自由詩 [逆さ水] Copyright 東雲 李葉 2013-11-26 14:09:28
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