年を取るとはこういうことか2
イナエ
3 足のある眼鏡
わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など
だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にどこかへ逃げた
鏡の中にも姿が見えない
しばらくすると 娘が連れてきた
「テレビの前に置いてあった」と
わたしは
テレビの前になど置きはしない
この時間テレビなど見ることは無いのだから
眼鏡が勝手に歩くなど
決して起きないことが起きる不思議さ
4 人の名
わたしの名を忘れたからといって
責めはしないが
二人の間を木枯らしが吹き抜けていく
やがて
どちらからともなく冬を呼んで
新年はやって来ない