年を取るとはこういうことか2
イナエ

 3 足のある眼鏡

わたしの仲間は誰でも言うのだが
決して信じてはいなかった
「眼鏡には足がある」など

だが 今朝 眼鏡が消えた
確かに洗面台の横に置いたのに
顔を洗っている間にどこかへ逃げた
鏡の中にも姿が見えない

しばらくすると 娘が連れてきた
「テレビの前に置いてあった」と
わたしは 
テレビの前になど置きはしない
この時間テレビなど見ることは無いのだから

眼鏡が勝手に歩くなど
決して起きないことが起きる不思議さ


   
 4 人の名

わたしの名を忘れたからといって
責めはしないが
二人の間を木枯らしが吹き抜けていく

やがて 
どちらからともなく冬を呼んで
新年はやって来ない



自由詩 年を取るとはこういうことか2 Copyright イナエ 2013-11-24 09:05:17
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