物語
月形半分子


月夜花夜夢なき夜に

散る花抱えて泣く孤独

「こんなにも惨い私の人生よ

孤独より、死よりも恐ろしいのは私の心

人ならぬ身で夢みるこの心

もう私には人並みな幸せなどないものを」

何があったか哀れな野獣

絶望の扉で城閉ざす



踏む霜降る雪震える娘は

森の闇にも負けずにあるく

「待ってて 父さん

今、私が助けに行きます

私は、どんなめにあってもかまいません

それ以外私に何が出来ましょう」

何があったか美しい娘

おののく心、不安に負けまいと歩きゆく


薔薇は何故命を守る

野獣は何故泣く

娘は何故急ぐ


散る花降る星またたく心

花盗人の父の身代わりにいく娘

薔薇より美しい娘は時惜しみいく

物語が待つと知ってか知らずかあの城へ

未来に背を向けた野獣の心には

今日も冷たい雪の降るばかり


物語はいつも淋しい心からはじまります

しんしん淋しい心から

ほら娘が城の扉を叩いています

物語のはじまりです







自由詩 物語 Copyright 月形半分子 2013-11-24 03:56:08
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