祝い
蒼木りん

今日も倒れずに済んだ

いや
済んだんだ

私の毎日は危うい

いつ不意に背中を押されるか
足元をすくわれるか
おとしめられるか

怯えている暇もないのだけれど

今日も
私が私のままで納まった


曖昧さが確定に変わるだろうか
向上するだろうか
衰弱するだろうか

死ぬまで
私が私という位置で
生きぬくことはできるだろうか

時折
足元は丸太の橋や泥濘ぬかるみ

前だけ見ているとき
足元に気をつけているとき
後ろを振り返るとき

あとは
余所見をしているとき

去年まで
よく余所見をしていた

楽しかった
あの時をもう一度

いま思えば
道を踏み外さなくてよかった

余所見は
危険な行為だ

暇も金もないので
もうあまり余所見をしていられない

しかし
あの快感は覚えているのだろう

大トロを
隠れて食したときみたいな

でも
今日の無事のお祝いに

いまは
いくら丼が食べたい





未詩・独白 祝い Copyright 蒼木りん 2005-01-11 00:52:15
notebook Home 戻る  過去 未来