白い鳥、飛んでいった
石瀬琳々

ね、といって目を閉じた
静かにその翼を閉じるように
ね、あなたの見る夢のなかに
白い鳥、翼をひろげて飛んでいった
その羽ばたきがかすか、耳もとにくちづける


ね、あなたは今も孤独なのだろうか
あの湖にさまよう淋しい舟のように
いつか二人で沈んでゆく夢を見た
わたしは見上げて あなたの指さきが消えるのを
あぶくが涙のように立ちのぼるのを


白い鳥は言葉をうしない、わたしはイラクサを編む
かじかんだ指は時を編む この心あなたに届くように


それは誰も知らない、二人だけの時間
いつか指さきが触れる暁の彼方に
あなたは微笑むのだ わたしをその目でじっとみつめて


ね、あなたの見る夢のなかに
たとえ遠くても行こうとおもう
わたしはきっと白い鳥になってあなたのもとへ
泣きながらなきながらあなたのもとへ
わたしたちの白い翼はまだ若くこんなに力強い


白い鳥、翼をひろげて飛んでゆく
白い鳥、あなたの見る夢のはるか遠くへ 彼方へ




自由詩 白い鳥、飛んでいった Copyright 石瀬琳々 2013-11-20 13:47:21
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