震えが止まらない
ichirou

我家の軒下にやってきた 
つがいのツバメ

気がつくと
いつの間にか
1羽だけになっていた

それから
ずっと
一羽のツバメは
巣の中で
じっと外を見つめていた

あたりを警戒する様子もなく
視線は
冷たく
凍りついていた

ある雨の日
もう巣には
一羽もいなかった

草のにおい
虫の音
遠くの空の小さな雷の音
寂しい雨音
主のいないツバメの巣


その日以来4年間
この巣に
ツバメは1度も戻ってこない

誰も手入れをしなくなって
壊れかけた巣を
僕はデッキブラシで
きれいに壊した

もう忘れたい
そう思った

壊した巣のかけらと
小さな羽毛が
風に舞い
なにごともなかったように
無くなっていった

次の瞬間
僕の心と体は
小刻みに
震えだした

確かに
見たのだ

風に舞う
巣のかけらと
小さな羽毛と
小さな鳥の骨を


自由詩 震えが止まらない Copyright ichirou 2013-11-16 17:06:51
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