空人形
ふく


とりあえず黒のカーテンに埋もれていくような
息はできるのに周りはカーテンがはためいてるだけで
それはやっぱり息が詰まりそうな

あなたは優しく頭を撫で 抱きしめる体温は見当たるのに
それが自分の体に当たり 跳ね返り またあなたの体に戻るのがわかるのに

私はそこにはいませんでした
私はそこにはいませんでした

あなたは励ますでもなく ただ抱きしめていました
ただ私はそこにはいませんでした
外側からゆっくり 自分を見ているだけでした

少し前
ため息をするにも我慢をしていた自分を思い出し 涙があふれました
でもそれは悲しいわけではなく ただ涙が勝手に出て行ったのでした

私の意志はどこにいるんだろう

黒いカーテンが見えなくなっても 私は一人でゆっくりとしか動けませんでした
あなたが優しく抱きしめていても それは変わりませんでした

でもあまりにも優しいので 私は安心する他ありませんでした

私の涙がとうにティッシュと消え 私が戻ってくるまでの間
ただ彼は抱きしめていました 無言で壊れかけた人を抱きしめていました

それは必死に切れかけた糸をつなぎ合わせるような
繊細な作業がわからない彼ならではの 素晴らしい行動でした

ようやく私の目が彼の目を見ました
私自身が体を制御し 彼を見ました

空も闇も空も 何も変わりはしませんでした




自由詩 空人形 Copyright ふく 2005-01-10 21:54:03
notebook Home 戻る  過去 未来