カナリアの唄
umineko

私がもしも
粒子になったら
あなたのところに飛んでいこう
私が
私とわからない
でも
あなたはわかってくれる

(ご遺体の損傷がひどく
(確認にはずいぶん 時間がかかりました
(カルテをみて 治療跡と照らし合わせて
(ごめんなさいって 言いながら
(濡れたシーツで くるんだんです

ほんの
数時間までの生が
もはやもう
そこにはない
そんな中で夜を過ごす
カナリアの群れ
あの日

穏やかな海が
荒くれた怒声となって
雄叫び舐め尽くし荒れ狂う 
まさに獣だ獣の王、それが狂うということ 
あなたも

津波に襲われた
コンクリートのかごの中
眠れないカナリアたちは
再び朝の歌を聞く

私は

認識できない粒子になったら
あなたのそばに寄り添おう
あなたの

眠らない夜のその寒さに
口笛で答えよう

いま
風が鳴いたね 
たぶんね

ありがとう
それが

私の意味だ
 
 




自由詩 カナリアの唄 Copyright umineko 2013-11-09 07:12:04
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