存在
山川いちり

寄せ木座細工の夜とはよくいったものだ。

まるで私達は寄せ木細工のように
ひしめき合ってこの世界をつくっている

その一つ一つの細工として生きている
雑踏の中で何気なく足を止め佇んでみる

疲れ切った足を引きづって
無言ですれ違って行く見知らぬ人々

その息づかいがぎしぎしと錆びついた
時計の歯車のような音をたてているのが
聞こえてくる

そしてその音に耳を澄ましふと気づく

私もその錆びついた歯車のひとつ
なのではないかということに

そして私は対となる歯車もなく
どこにもはまることのない
替えの部品にもならない歯車
ということに

どこかに私という歯車が合うところは
あるのだろうか

探しに行こうか

それとも訪れを待ってみようか

いいや、そのどちらも違う

誰かの歯車に組み込まれるのではなく
私はこの手で歯車を生み出さなくてはならないのだ

そして生み出した歯車をつなぎ合わせて時を刻むのだ

それがここに存在するということだ

それが私になるのだ


自由詩 存在 Copyright 山川いちり 2013-11-02 22:40:24
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