太極
ゆったいり

秋の夜長のつれづれに
ふと目を閉じて夢想する

意識は記憶の霧を飛び
いつか来た森へ降り立つ

倒木に、双葉が出ている
蓄えられた養分に
土の上より住みよいらしい

乾いた川の跡がある
空に昇った水たちは
雲となりまた降り注ぐ

循環する地球

明るい昼のすぐそばに
夜の闇が寄り添って
光陰ぐるぐる回り廻って

いくつもの昼夜が流れ
また僕は秋を迎えた

水車がある

春を汲み上げ夏として
下ろし始めて秋になり
冬から春へと流れに帰す

明も喑も
生も死も
くみあげられては降ろされる

浮かぶビジョンは絵画のように

いつまでも回る水車
流れる大河は騙し絵のよう
上流下流繋がって
永遠に廻り続ける

人はみな大河の一滴
ならこの身を預けてしまおう

溶け込んでいく認識

彼我はあざなえる縄のごとく
体系はほどけ、境界は消え
言語を越え差し込む実感
光は白に色彩は黒に
雑多であることこそが一つ
光陰は紡がれ陰陽は止揚し

悟る

充足しきった恍惚の中で、
僕たちの見落とした間違いを想う

暗闇を恐れ、光で満たし
無音を嫌い、音声で埋め、
静寂と安息を失くして

あまりに多くのことを語りすぎるのだ


自由詩 太極 Copyright ゆったいり 2013-11-02 19:53:50
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