天奏万里
クナリ



もう会わないと決めた時から
もう頭の中はあの人で一杯

好きだと言ってくれる人には
嘘をついていればそれでよかった

嫌いになってくれるから
でもあなたにはなぜか
嘘がつけずに

いるかもしれない人ごみに
いないあなたを探しては

伝えたい言葉を編み上げて
伝わらないことに救われる

いまいましさに任せては
唾をふいたら我が足に

いらいらしながらため息は
自分の頬を濡らすだけ

我が身の傷をさらしたら
もっと濃い闇を見せて慰めて

自分の恥もさらしたら
そんな君がいいんだと言ってくれ

言葉では伝わらないことを
言葉でしか伝えられないのなら

あなたの頭のその後ろ
いつも張り付いてる闇を
今追い払ってあげたなら
もう見向きもしないでしょう

あの人をもし手に入れて
欲望に任せることを許されて
やりたいことなら何かといえば
いっそう話をしたいだけ

「わかるよ」と言って
欲しいだけ

優しいですねと言ってはくれても
到底到底 あなたほどには

あなたと話している時だけは
寂しくなどないものだから

僕が寂しい人だということに
あなたばかりが気づかない

あなたでなければ誰でもいいと思った時には
あなたでなければ駄目になっていた

もう会わないと決めた時から
もうあなたしかいない。

あなたしかいない。

……。



自由詩 天奏万里 Copyright クナリ 2013-11-02 12:23:50
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